あの時に戻れたら【短編】
時計の針を目をつむりながらさっきよりたくさん回した。これでもか、これでもか!ってくらい回した。

そして心の中で「お父さん!」って何度も呼んだ。




深呼吸をしながら目を開ける…。




目の前に広がる光景は…私の実家だった。


「あれ…おばあちゃんちじゃない。」

郵便屋さんが家の前でポストに手紙を入れていた。試しに声をかけてみる。

「ご苦労様です。」



郵便屋さんは振り向く事もなくバイクで行ってしまった。


「やっぱり。見えてないんだ。」




< 16 / 83 >

この作品をシェア

pagetop