それは、輝く星空のように

柏木権造

――あれで、よかったはずだ。


智徳は、夜の街を悶々と歩いていた。


智徳の仕事は、いわゆるアブナい方面のものが中心だ。


身の危険を伴うこともある。


自分と関わっていれば、菜月の平穏は壊れてしまう。


それはかつての誓いに反する。


智徳は何度も繰り返した。


本当に大切なものは、自分のそばに置かないものだと。


ずっとそうして生きてきたはずだ。


「くそっ・・・」


彼女の顔が脳裏から離れない。


何故、何故と心で叫ぶ。


智徳は苛立ちを覚えていた。


――止めよう。


あらゆる思いを打ち消す。


これから、柏木権造と会うのだ。


下手な態度をとれば、命が危うい。


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