迷子のコイ
「・・・早坂、
 オレずっとオマエのこと・・・」


痛いくらいにあたしを抱きしめながら
タカくんは言った。


「ヤダ・・・タカくん、
 ジョーダンやめてよ。
 はなして!」


あたしのその声に、
タカくんは
ますます両腕に力をこめて
あたしを抱きしめた。


 ( ヤダ・・・痛い!! )


この公園を抜けさえすれば
あたしの家はもうすぐだった。

でも、そのすぐの距離が
今のあたしには遠く感じる。



「ヤダ・・・離してってばぁ!!」


あたしは声を大きくして言った。

タカくんとの距離が近づき
カレの顔が
ますますあたしの髪に埋もれるのが
肩ごしにわかった。


「・・・早坂、俺とつきあって」


息をあらげながら
カレがあたしの耳越しで言った。

その直後
強い衝撃が、あたしの体を駆けぬけた。









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