迷子のコイ
「・・・きゃっ!!」


トイレに行こうとしたあたしの足に
誰かの足が伸びてきた。


「あっ、ごっめーん」


そう言いながら
上からあたしを見下ろしてたのは
沙紀ちゃんだった。


島谷 沙紀ちゃん。


春にあたしを呼び出した
3人のなかのヒトリの子。


「ごめんねぇ。
 そのほっそーい足が折れたら大変ね」


笑い声とは反対に
彼女の目はあたしをニラミつけてる。


あの、『呼び出された日』から
クラスの女子の
あたしへの総ムシは
まだ続いていた。


あたしをかばった
ナギへの風当たりも強くて
クラスであたしたちは孤立していた。


だけどフシギに、つらくはなかった。

ナギがいてくれたし、
俊哉もなにかにつけて
あたしたちの側にいてくれたからだ。
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