迷子のコイ
「・・・大丈夫か?」


廊下で転んだあたしに
ヒトリの男のコが声をかけてきた。


「・・・佐伯・・・くん」


あたしは廊下に転んでる姿を
カレに見られたのがはずかしくて
あわてて立とうとした。

そんなあたしに
カレが手をさしのべてくれる。


「アリガト・・・」


あたしはドキドキしながら
カレのその手に
自分の手をかさねた。


すると、それを見ていた沙紀ちゃんが
みんなに聞こえるような大声で言った。


「アイリはホント、モテていーよねぇ。
 友達のカレにだってモテるし、
 ホント変わってほしーよ!」


沙紀ちゃんのその言葉に
あたしは立ち上がりながら
カオが赤くなっていくのを感じた。

恥ずかしくて恥ずかしくて
うつむいたまま
カオをあげられなかった。


< 78 / 203 >

この作品をシェア

pagetop