迷子のコイ
「・・・大丈夫か?」


騒ぎのあった廊下から、
下の階へと連れ出してくれた佐伯くんは
あたしにそう聞いた。


「・・・うん・・・」


あたしは佐伯くんに
『友達のカレをとる女』だって
思われてるかもしれないと思って
カレの顔が見れなかった。


『イジメられてること』も
カレにバレてしまったと思ったら
はずかしくて はずかしくて
顔から火が出そうだった。





「・・・気にすんなよ」


あたまの上から聞こえるカレの声に
あたしは何も言わず
うつむいたまま・・・


「ごめんねっ アリガトっ。
 あたし・・・教室戻るねっ」


これ以上は恥ずかしくて
カレのそばに
いられなかったあたしは
カレの手を離して
4Fへの階段を駆けのぼった。


< 80 / 203 >

この作品をシェア

pagetop