迷子のコイ
「・・・元気だねぇ」


俊哉を目で追いながら
ナギがおばさんくさく言う。


「ナギ、おばさんくさいよ・・・」


「え~だってさぁ、
 どーせこのあと体育だよ?
 わざわざその前にサッカーとかする?」


「・・・しょうがないじゃん、
 だって、『俊哉』だよ?」


オカシを次々と口に放りこみながら
あたしは言った。

その言葉にナギも
『ああ』って顔をしてうなづいた。





「・・・今日の体育ってなんだっけ?」


「バレーでしょ?」


「・・・ダルイな・・・」


「・・・ナギがそんな事ゆーなんて、
 めずらしーね。
 体育、得意じゃん」


「・・・ん・・・」


あたしと違って
運動神経抜群のナギでも
体育をイヤになる日があるんだなぁ。



「5分くらい前になったら、着替える?」


「・・・ん・・・」


ナギを見たあたしはその時すこしだけ

『あれ?』って思った。


( ナギって、こんなに色 白かったけ? )


でもそれは光の加減なのかなとも思った。

次の授業への予鈴が鳴って、
あたし達は
のろのろと着替えはじめた。






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