鬼畜王子の飼育方法



「…あのさ、夏生」


廊下を歩く夏生のセーターを、くいっと引っ張る。


「なに?」


「や、なんか先ほどから視線が痛いんですが…」


私の言葉に、夏生は周囲に視線を移すと、「あぁ…」と納得したように呟いて言った。


「仕方ないよ。志季先輩、目立つもん」


「…目立ちすぎでしょ」



だって…歩いてすれ違う度に、みんなが振り返る。


女子に至っては、携帯カメラなんか構えちゃってるし。


「志季先輩が女と歩いてるのが珍しいんじゃない?」

「へ、そうなの?」


てっきり、普段から女の子をブイブイ言わせてるものだと思ってた。


「志季先輩は、あんなにかっこいいのに彼女を作らないって有名なの。」

「…へぇ」


いないんだ、彼女…。

そういえば前に、キッチンの宮下さんが言ってたな。

バイト辞めた子たち、みんな志季に振られてるって。

何か関係があるのかな…?

あ、ひょっとしてアッチの人とか??


勝手に想像が膨らんでは、暴走してゆく。



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