妹なんていらない
「いてぇ」



俺はまだヒリヒリ痛む頬を押さえながら、グラウンドの中心にある炎を見ていた。



御門台祭の最後の締めくくり。


まあ、俗に言う後夜祭。




「あーあ、せっかく結城くんと………」



「あのな、そのセリフ、今ので八回目だからな」



隣で一人愚痴る美波。



てか、俺を殴ったことは忘れてんのかよ、こいつ?




「うっさいわね…

分かってるわよ、病気なら仕方ないってことくらい…」



「そうかい、そりゃよかった」




ちなみに結城はあの後保健室送りになり、それから親が迎えにきて自宅へ帰った。


補足しておくと、あいつの熱は四十度近くあった。


実は直接的な原因はあの雨ではなく、三日前から熱はあったのだが、それを雨で悪化させたのだそうだ。




「………まあ、さ。

結城くんとできなかったのは残念だったけど………」




ふいに、美波が俺を見た。




「あんたとの劇も…案外………」


「はぁい、飲み物買ってきたよー」




と、ここで珍しく気を利かせた雨宮が飲み物を両手にやってきた。



雨宮の登場に美波のやつがえらく不機嫌な顔をしたのだが、触れると怖いので流しておくことにする。
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