妹なんていらない
その人影に気づいたのは校門を出てからだった。



「美波?

お前、まだ帰ってなかったのか」



そこにいたのは美波だった。


うちの学校は三年になると放課後に六時までの補習が始まる。



ちょっと前までは文化祭の練習などで俺より帰宅するのが遅かったが、今は違う。


美波は部活をしていないため、こんな時間帯まで学校にいることはない。



「ちょっと…いい?」




美波は暗い表情をあげた。



それだけで、何となく、話の内容はわかった。





久しぶりに二人で家路につく。



隣を歩く美波は相変わらず暗い表情のまま。



千鶴の弟の葬式以来、ずっとこんな感じだ。



だが、かくいう俺もそう。



多分、俺はこいつと同じような顔をしている。
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