粛清者-新撰組暗殺録-
「よぉ、待てよ斎藤!」

彼を追って、三十郎がヨタヨタと歩いてきた。

斎藤は聞く耳持たず、近くの石段を少し早足で登っていくが…。

「待てってんだよ!」

三十郎は遂に怒って携えていた槍の穂先を斎藤の背中に向けた!

「貴様ぁっ!先輩隊士の言う事が聞けぬのかっ?」

「……」

斎藤はゆっくりと肩越しに三十郎の顔を見る。

「…何だその眼は」

三十郎は石段を駆け上がり、踊り場で斎藤と睨み合った。

「年若の小僧が、そんな眼を向けていいと思っているのか?」

…斎藤は口も開かないまま、三十郎を睨んでいた。

その態度が三十郎はますます気に入らない。

「この小僧がぁぁぁっ!」

カッとなった三十郎の槍の穂先が、斎藤の右の頬を掠めた!

…彼の頬を真っ赤な血が伝う。

「小僧…貴様新撰組随一の使い手などと言われて、少々いい気になってはおらぬか?その傲慢な鼻っ柱、この新撰組七番隊組長、谷三十郎がへし折ってくれようか?」

酒が入っている事もあって、三十郎は正義の味方気取りで大見得をきる。

と。

「あー…いかんな…」

< 104 / 134 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop