粛清者-新撰組暗殺録-
斎藤は左手で顔を押さえ、指の隙間から三十郎の顔を見た。

「…!」

その背筋も凍るような眼差しに、三十郎は戦慄を覚える。

「酒が回ってきたか…人が斬りたくなってきた…」

斎藤はスラリと刀を抜く。

三十郎がビクリとした。

酔いが醒めていくのを感じる。

「き…貴様…俺を脅すのか?先輩の俺に…剣を向けるのか?」

「何を言っている…谷」

斎藤は静かに左片手一本刺突の構えを取る。

「斬り合いに年上も年下もあるか…それに貴様は…」

剣気を込めた眼差しでキッと睨む。

「俺の前で言ってはならぬ事を言った…死ね」

その台詞を吐くと同時に刀の切っ先を放つ!

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