粛清者-新撰組暗殺録-
「何だ、そういう事か。まあ仕方なかろう、君は新撰組の中でも隊内暗殺や内部監察のような仕事ばかりを務めてきた男だ。人との関わり合いが苦手なのも無理はない…だが、もう心配は要らんぞ」

伊東は更に酒を勧める。

「私は部下のハラの中も読めぬ愚かな近藤とは違う。君やこの場にいる全ての者達の気持ちを汲み、それらの意思を尊重する。それだけは約束しよう。だから斎藤君」

彼は斎藤の肩をポンと叩いた。

「新撰組三番隊組長としての君の剣を、近藤勇暗殺の為に存分に振るってくれたまえ。音に聞こえた君の『左片手一本刺突』を以って、近藤を串刺しにしてくれたまえよ」

「……」

一瞬、斎藤の表情が険しくなった。

が、それを伊東に悟られるよりも早く。

「お任せ下さい」

斎藤は野心に燃える眼で薄く笑った。

「暗殺は俺の十八番です。俺の手で、、確実に近藤勇の首は取って参りましょう…」



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