粛清者-新撰組暗殺録-
「うむ!頼もしい!それでこそ『元』新撰組三番隊組長だ!」

伊東は柏手を打った。

「よし!今夜は御陵衛士発足を祝う記念すべき夜だ!芸妓を呼べ!酒をもっと運べ!飲んで食って騒ぎ倒すがいい!」

伊東の言葉に御陵衛士の隊士達はワッと声を上げた。

唯一人、斎藤を除いて…。

宴が終わったのは既に日付が変わって二時間が経過した頃。

「うぃ~…実にいい気分だ…」

伊東が千鳥足、ほろ酔い気分で夜の京洛を歩く。

その後ろを御陵衛士の隊士達、そして最後尾を斎藤一…。

そこそこ飲んではいたものの、斎藤は然程酔ってはいないようだった。

…それとは対照的に泥酔状態の伊東達の目を盗んで、斎藤は路地裏に入って集団から離れようとする。

が、しかし。

「斎藤君!」

伊東の声に、斎藤は立ち止まった。

「まだ夜はこれからだぞ?一体どこへ行くんだね?」

「…申し訳ないのですが」

素早く表情を変え、斎藤は当たり障りのない笑みを浮かべた。

「ちと待たせている女の事が気になりまして…よろしければ俺はここでお暇させて頂きたいのですが…」

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