粛清者-新撰組暗殺録-
「…遅くなって申し訳ありません、土方副長」

「いや、気にするな…それより首尾よくいったか?」

「はい…」

斎藤は静かに頷く。

…斎藤の御陵衛士参加は表向きだけのもの。

実は彼は近藤や土方らの直々の命令により、伊東率いる御陵衛士の内偵調査をする為に、密偵として御陵衛士に潜入していたのだ。

勿論この事は近藤と土方以外は誰も知らない。

敵を欺くにはまず味方から、という訳だ。

「それで…伊東の方はどうだった?」

「はい…」

斎藤は神妙な顔をする。

「やはり別働部隊というのは名ばかりのようです。近藤局長暗殺を手土産に倒幕派や攘夷派の志士どもに取り入る気でいるようです…」

「そうか…やはり近藤さんの読みは当たりという訳か…」

土方はそう言って顎を撫でる。

「土方副長…」

指示を仰ぐかのように土方の顔を見る斎藤。

「ああ、わかっているさ、斎藤…」

土方の眼がギラリと光る。

「お前には、またひと働きしてもらう事になりそうだ…」

< 125 / 134 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop