粛清者-新撰組暗殺録-
「待って」

彼女は総司を呼び止めると、懐から何かを取り出した。

それは白い鉢巻だった。

「新撰組の人達って、みんな羽織に揃いの鉢巻をしているでしょう?なのに貴方は最近していないようだったから、気になっていたの」

「あ…僕のは前に返り血で汚れてしまってそれ以来…」

「だったら尚更いいわ。受け取りなさい」

秩はそう言って総司に無理矢理鉢巻を握らせた。

少し顔が紅潮しているようにも見える。

「新撰組は嫌い…人斬りも嫌い…でも」

秩は照れ臭くなったのか、総司に背を向ける。

「沖田様は…少し見直しました…」

言い残して、秩は駆けて行く。

「……」

総司は耳まで真っ赤にして、その場に突っ立っていた。

と。

「一番隊組長とは思えんな。隙だらけだぞ沖田君」

突然の声に心臓の止まる思いだった。

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