粛清者-新撰組暗殺録-
「余所見とは余裕だな、壬生狼が!」

突然背後からの斬撃!

完全に不意を突かれた永倉は咄嗟に刀を横に構えて斬撃を受け止めるが。

「ぐぅっ!」

あまりの威力に永倉の刀は折れ、更には彼の左手の親指が削がれる!

「ぐっ…貴様…っ!」

傷を負って片膝をついたまま、永倉は己の指を削いだ相手の姿を見た。

「血に餓えた狼どもが。我らの崇高な目的を邪魔するというのならば、この長州派維新志士、吉田稔麿が刀の錆にしてくれる…」

その男…吉田稔麿は刀を肩に担いで永倉を見下した。

このまま永倉がとどめを刺されるのも時間の問題。

しかし。

「永倉さん!」

立ちはだかる志士どもを斬り散らして、総司が永倉の危機に駆けつけた。

「ほう…」

吉田は刀を担いだまま、目線だけを総司の方に向ける。

「お前か。新撰組の人斬り鬼と呼ばれる若造というのは…」

「新撰組一番隊組長、沖田総司だ」

総司は刀の柄を両手で握り、刺突の構えを取った。

得意の三段突きの構えだ。

「いざ尋常に…勝負!」

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