粛清者-新撰組暗殺録-
「尋常に勝負だと?」

吉田は刀の柄を握り締めたまま鼻で笑う。

「一人相手に四人五人で斬りかかっておいて京洛最強などとほざく壬生狼如きが、一対一の勝負などできるのか?」

「……」

総司は構えたまま黙っている。

「どうした、反論すらできぬと見えるが?」

嘲笑する吉田。

しかし。

「貴方にそんな台詞が吐けるのか?」

総司は剣気を込めた眼で吉田を睨んだ。

「今の時代…佐幕だ倒幕だと思想の違う者同士が争い、闇夜で油断していれば侍は否応なく斬り捨てられる世の中です。新撰組とて確かに汚い人斬り働きをやっている。貴方の言うように、一人相手に多数で襲い掛かるような真似もする…だけど新撰組のやっている事が、己の思想を押し通す為に無辜の民の生活を炎に包もうとする貴方達の計画と、どれ程の差があるというのです?」

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