粛清者-新撰組暗殺録-
「…何の真似だ」

斎藤は横目で永倉を睨んだ。

「沖田君をこのままおめおめと奴に殺らせるつもりか」

「今は一騎討ちの最中だ」

「美学という奴か…命を落とせば一文の得にもならんぞ」

永倉の手を振り解き、斎藤は左片手一本刺突の構えに入る。

が。

「邪魔しないで下さいよ…斎藤さん…」

激しく呼吸しながらも総司が言った。

「こんな晴れ舞台…人生に二度もないんです…」

永倉に言ったのと同じ台詞を口にして、掃除はこの窮地に笑顔を見せる。

「迫る死への恐怖で気でも触れたか」

構えたまま総司を嘲笑う吉田。

だが、それでも総司は笑みを絶やさない。

それどころか、先程見事にかわされた三段突きの構えを取った。

< 57 / 134 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop