粛清者-新撰組暗殺録-
酒井兵庫捜索の任務を受けた総司と永倉率いる一隊は、摂津住吉神官まで足を伸ばしていた。

「いませんねぇ…」

総司がキョロキョロと辺りを見回しながら頭を掻く。

「何…奴が犯したのは力の無い女相手に夜這いをかけるような姑息な罪…ならば奴がとる逃亡の手段も…」

言いながら永倉は刀を抜いた。

そして。

「うわっ!」

近くの木に向かって凄まじいまでの斬撃!

永倉の横薙ぎによって太い木の幹は真っ二つになり、その幹が倒れると共に悲鳴を上げて一人の男が落ちてきた。

「『潜伏』という最も姑息な手段に決まっている」

永倉が睨みつけた先には、無様に地面に腰を打ちつけた酒井がいた。

「こんな所にいたんですか、酒井さん。それじゃあ…」

総司は笑みを湛えたままスラリと刀を抜く。

「逃亡は士道不覚悟。決心はつきましたか?」

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