粛清者-新撰組暗殺録-
近藤の追討命令で壬生屯所から隊士達が放たれて一刻が経過する頃。

山南は京都を離れようとしていた。

…この血生臭い街に未練はない。

未練があるとすれば明里と、己を慕ってくれた隊士達の事のみ。

彼はふと立ち止まり、京の街を振り返った。

「沖田君…君が追っ手ならば、討たれてやってもいいかも知れぬな…」

そんな事を呟いていた時。

「俺では討たれてくれる訳にはいかんか?」

山南の背後で声がした。

静かに振り向いた時、そこにいたのは。

「山南敬助。お前に抹殺の命が下った」

新撰組三番隊組長、斎藤一だった。

…山南はさめた笑いを浮かべる。

「逃亡してしまえば総長でも呼び捨てか…」

そう言って刀を抜く。

「申し訳ないな」

呟く斎藤。

「いや構わぬよ…その方が迷いなく闘える」

山南の言葉で斎藤も抜刀、切っ先を向ける。

左片手一本刺突の構えだ。

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