粛清者-新撰組暗殺録-
両者の間の空気が、途端に密度を増していく…。

そして。

「おおおおおおお!」

斎藤の左片手一本刺突と山南の胴薙ぎ、二つの技が一瞬の間に交錯する!

結果は。

「!」

斎藤は左の脇腹から、山南は左胸から血を滲ませた。

相討ちだ。

「腕を上げたな、斎藤君」

「……」

斎藤は何も言わぬまま、再び左片手一本刺突の構えを取る。

「『己の得意技を昇華させ、絶対の必殺技にまで高める』…確か土方君の教えだったな…」

山南も正眼の構えを取った。

そしてこの闘い、二度目の交錯!

「がっ!」

今度も斎藤は左腕から、山南は左肩から出血。

またも相討ちだった。

ただ先程と違うのは、山南は交錯した後に立ち止まらず、そのままその場から逃走した事だった。

山南の戦闘回避。

それが斎藤と山南の勝負の結末だった。

「フン…」

斎藤は追わぬまま、刀を肩に担ぐ。

「まあいい…手柄は永倉に譲るか…俺も『総長殿』を討つには忍びない…」

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