粛清者-新撰組暗殺録-
斎藤の手から逃れ、山南は走り続けて京都から離れていた。

追っ手がない事を確認して、茂みに隠れて息を整える。

「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」

胸の傷を押さえる。

斎藤の左片手一本刺突によって受けた傷からは、まだ出血がおさまっていなかった。

「成程…流石は新撰組組長三強と呼ばれるだけの事はある…」

こんな時ながら斎藤の剣腕には感心してしまう。

その時。

「!」

背後からの射抜くような剣気を込めた視線に気づき、山南は咄嗟に振り向いた。

…茂みの向こうから、何者かが近づいてくる…。

「そんな手傷を受けた上で、再び新撰組組長三強の一人と闘わせるのは忍びないが…」

草むらの中から相手が姿を現す。

「すまぬが、大人しく命を取らせてくれ」

それは新撰組二番隊組長、永倉新八だった。

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