最後に初めまして。
真夕美を無理矢理体から引き離した。
腹の辺りが急に熱くて仕方がなかった。

抑える手に生暖かいヌルヌルする液体が絡み付いて来る。

それが何を意味するのかこの時初めて分かった。俺は腹を刺された?

手に当たる冷たくて硬い物を無理矢理抜き取り放り投げた。


「――…くッ。」


―― ガチャッ。――


ポタポタと溢れ出る血を見て真夕美は震えだし始めた。


「これで…気が済んだだろ?もうこれ以上…付きまとうな。」

『ごめん…なさい。わた…し、いやぁぁぁっ。』


真夕美はその場から這って逃げる様に姿を消し去った。


「チッ…ヤバいな。感覚が薄れて来たか…。」


倒れ込む様に運転席に乗込みキーを差し込んだ。
震える手で煙草に火を点け気持ちを落ち着かせる。

古都に逢いたい…。

この気持ちだけが俺を突き進ませる。
キーを回し車を走らせた。

何処をどうやって走ったのかなんて覚えてもいなかった。

俺はもうろうとする意識の中で古都に電話して待っていた。

かすむ目の中で古都が嬉しそうな顔で駆け寄って来たのが分かった。

良かった…古都は無事だった。


『きゃああーっ。登、登ぅ…――。』

「逢いたかった…。」


俺の意識はここで途切れた。
暗い闇の中を彷徨う様な感覚だった。

そうあれは母親がいなくなった次の日の夜みたいに冷たくて寂しい暗闇だった。
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