最後に初めまして。
もう何時間待っているのか…でもそんなに時間は流れていない。

ベッドで寝ているだけの俺にはとてつもなく長い時間に感じていた。

小学生の時もあの男に水をかけられて外に出され風邪をこじらせ入院したが、あの時は病院が一番安全だと思い帰りたくなかった。

今は早く帰りたい。
退屈で死にそうだ。

ヒロは百合さんを連れて来ると言って帰って行った。

話相手がいないのは辛いな…。


『トントン…生きてますか?心配させ過ぎの登君。』


待ち人の声で気持ちが揺れた。


「残念ながらまだ生きてますね。心配性の古都ちゃん。」

『――…ばかッ。』


そう言って駆け寄って来た古都は涙を溜めて抱き付いて来た。

どれだけ心配かけたのか分からないが、もし逆の立場だったらと考えるだけで胸が締め付けられる思いだ。


「ごめっ…心配かけたな。古都、ごめんな。」


古都の髪をなでながら俺はただ謝るしか出来なかった。

古都は俺の片手を握締めてひたすら泣いていた。
声を殺しただ、ただ泣き続けていた。

泣き疲れたのか落ち着いたのか、しばらくすると古都は顔を上げて微笑んだが、そこにはブラウン色の瞳はなく真っ赤な瞳で頬も引きっている様だった。

頬に流れる涙を俺は指で拭き取り古都の顔を確認するように触れた。

古都はその指にそっと唇で触れてくれた。
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