さよならとその向こう側
マンションの前についた。


実は相変わらず私の肩を抱き寄せながら部屋へと向かう。


そして、部屋の鍵を開け始めたのを見て、私は少しためらった。


だって、私は部屋に入れて貰っていいの?


まだ彼女かもしれないが、これから別れ話をされるのは分かりきっている。




「ねぇ実…。私は、部屋にあがっていいの?」


胸がズキズキした。

なんでこんな事を尋ねなければいけないんだろう。


悔しさから、また涙が零れそうになる。


すると実は、私を見つめながらためらいがちに答えた。


「…もちろん。大事な話だし、落ち着いてゆっくり出来る方がいいと思う。彩夏が、迷惑でなければ……。」




"大事な話"

本当は聞きたくなかった。

だけど、私は覚悟を決めてドアの向こうに入って行った。



< 26 / 403 >

この作品をシェア

pagetop