さよならとその向こう側
「綾さぁ……ほんとに世話がやけるよな。」


そう呟いて――敦は私を抱きしめた。




「…え?」


何?なんで?

どうして、抱きしめられてるの?


「あつし…?」

どうして?って聞きたいけど、次の言葉が出て来ない。

そして、そんな私の葛藤なんて気にしない敦は、優しく私の頭を撫でながら言った。


「失恋なんてもんは、誰でも経験するんだよ?そんな事でいちいち死んでたら、命が幾つあっても足りないだろ?」


「……。」


「人の気持ちだけはさ、何したって簡単に手に入る物じゃない。恋愛が必ず上手くいくとは限らない。自分の気持ちを受け入れて貰えない事なんか、沢山ある。でも、だからってそれを押し付けたりしたら、駄目だと思う。それはただの綾のワガママだ。」



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