さよならとその向こう側
「実、私に聞きたい事があるんじゃないの?」
「え?」
「最後に私のアパートで会った日に、言ってた事。……何?」
本当は分かってる。
あの時は想像もしなかったけど、今なら分かる。
実が聞きたいのは、お母さんの事だよね。
佐和田教授の言う通り、私がお母さんをかばっているかもしれない――そんな事を考えているはずだよね。
聞きにくいだろうから、私から切り出すね。
生涯、誰にも話さないつもりだったけど。