さよならとその向こう側
!!?

お客さまって神田さんだったの!?


彼の顔を見た瞬間、疲れなんかどこかに行ってしまった。


「こ、こんばんは・・・・・・。」

ドキドキうるさい心臓を紛らわす為、必死に笑顔を作って挨拶をした。




ああやだ、大変!!
私とんでもなくボロボロの顔してない??

帰宅してそのままの状態でお皿を運んできてしまった私の顔は、疲れがにじみ出ていた事だろう。

失敗した。

神田さんだってわかっていれば、メイクくらい直したのに。

先にお母さんに聞けば良かった・・・・・・。


とにかく、このままの状態で居続ける事は避けたかった。


「ごゆっくりどうぞ」

それだけを告げて立ち上がった。





いくつになっても女心は複雑で、彼の側にいたいけれど、疲れきっている表情は見られたくない。

でも、相変わらず心臓はドキドキ煩くて・・・。

神田さんが私の家にいるという事実が、想像もしていなかったシチュエーションで、私の胸を締め付ける。

明日から、神田さんが座っているあのソファを見る度にドキドキするだろう。
そしてリビングでテレビを見る度に、あのソファに座ってしまうだろう。


そしてきっと・・・今夜私は、眠れなくなるだろう。









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