[短編集]恋花
そんな不安が胸をかすめ、自分から言い出すこともできなかった。
「―――アユム!」
どこからともなく、お母さんの声がした。
校門の方を振り向くと、手を上げながらこっちに向かってくるお母さんの姿が目に入る。
いつの間にか、私の隣にマナの姿はなかった。
「卒業式、どうだった?」
「…うん」
「みんなと写真とらなくていいの?」
「……」
お母さんはわかっている。
私がみんなの輪の中に入っていけずにいること。