[短編集]恋花
誰かに腕を掴まれているような、手首に感じる威圧感。
…“誰”に?
止まるな。動け!
体は言うことをきいてくれず、まるで金縛りにあったかのように、全く動こうとしなかった。
“一度この目で見てやりたい。”
ダイキの話を聞いたときは、マキを奪った女が憎くて、
怒りや憎しみという感情が俺の大部分を占めていた。
が、女の声を聞いてしまった今、胸の奥は、真逆の感情で埋め尽くされている。
あり得ないことが
あってはならないことが、今現在すぐとなりに存在している。