あなたは講師
私たちは館内に入ってすぐの、触れ合い水槽に向かった。

「りな、これ見て☆」
拓馬がいつになく無邪気な笑顔で、手をあげた。

「………ぃやあぁっ!」
思わず叫ぶ私を笑いながらふざけている。拓馬が手に持っているのは、ヒトデだ。
しかも奇妙な色で気持ち悪くて…。

私たちはしばらくそこでじゃれていた。



「そろそろ行こうか」
拓馬の声を合図に2人で歩き始めた。

水槽のトンネル、おっきな水槽、綺麗で小さな水槽、暗くて魚達がよくわからない水槽。

どこにいっても会話は尽きることはなかった。
でも私たちは黙り込んだ。


綺麗に磨がれた大きな水槽で、自由に泳ぐスリムな体と少し小さな体。

「…こんな、…すげぇ」
「…うん……。」

目の前にはイルカの親子。とてもしなやかに泳ぐ親とその親を真似る子。
親は子をリードしながら温かく見守っている。

『愛』を感じるとは今、この時の事だ。

私も拓馬も無意識のうちに手を握っていた。

昨日の夜のように。










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