あなたは講師
イルカショーの会場はこの水槽の真上にあるという。


2人でゆっくり歩いて会場に向かう。会話は、ない。ただただ、ゆっくり歩く。


「りな!拓馬くん!」
「もうすぐ始まっちゃうよ」

稚葉と章大くんと落ち合って空いてる席に座ると、指がとかれる。
ゆっくり。

私の指は名残惜しいそうに拓馬の指を強く掴む。無意識にそうしてしまった。

「りな…?」
どうした?と優しく私に微笑んでくれる。


今だけは…今だけは。




拓馬に、拓馬の優しさに甘えてる私は最低。分かっているけど、今は一人弱くなってた。なぜか。


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