あなたは講師
結局答えは見付からず、後10分で約束の時間。

「りな!早いな、…待ったか?」

「いや、待ってないよ!」

私は拓馬が持って来た温かいココアを手で転がす。


「あ、そういえば久しぶり!会うのは…」

「そうだねぇ。」

それきり時が止まったように沈黙が続く。

二人が時折ココアを飲む音しか聞こえない夕暮れの公園が、夜の色になる。


「…りなって門限とかある?もうすぐ8時なんだけど」

「…えっ!?もう8時?門限はないけど…」

「そっか、じゃぁ寒いし、俺ん家寄ってきなよ」


拓馬は私の手をとると、空いたココアの缶をゴミ箱に投げる。
ナイシュッ♪とガッツポーズをした後、私の缶も受け取り投げる。
私のココアの缶も、綺麗な放物線を描きゴミ箱へ吸い寄せられた。



私の手を引き、拓馬は歩き始めた。

ゆっくり。
あたたかく。
引かれた手に
肩の力が抜けた。








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