空の少女と海の少年


「おとうさんなんで……?」

「なんで?やってみたかったからだよ。人を切り刻んで、血だらけにして……美しいだろう?」


ナイフに付いた血を舐めとる男は
僕の知ってるお父さんじゃなかった


「蓮もすぐに切ってあげるよ……ほら、おいで。」

「いや…だっ……いやだっ!たすけて!」

ドオオォォォォン!!


僕が叫んだその時に
能力が覚醒したんだ

闇が全てを飲み込んだ
屋敷も死体も
お母さんとお父さんも


雨が降ってきたけど
僕は広い荒れ地に座って泣いた
こんな体が怖かった
こんな能力が怖かった

ひとりになったのが怖かった


「だれか……たすけて…。おかあさん…おとうさん……。」

『おいお前。お前がここを破壊したのか?』

「……ぼくをころすの?」


顔をあげると金髪の男が立っていた

雨が降ってるのに
どこも濡れてない男は
僕の瞳を見るとニヤリと笑って
目の前にしゃがみ込んだ


『お前、いい瞳をしている。殺してやってもいいが……ちょうど暇だったのだ。我の城に来るか?』

「ぼくがこわくないの?」

『お前こそ我が怖くないのか?』

「わかんない。」


僕が言うと男は愉快そうに笑って
立ち上がると僕に手を差し伸べてくれた


『我は三魔神の一人レノンだ。お前の名はなんと言う?』

「……れん。」

『蓮か、良い名だ。付いて来い。』


僕がレノンの手をとると
周りが真っ暗になった


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