空の少女と海の少年


──魔界の城では
魔神レノンが兄のカノンの
傷の手当てをしていた

光の矢による傷は
なかなか塞がらなかった
なので昔から伝わる
薬草による治療で地道に治していた


『なあレノン。お前の息子はどうした。可愛がっている人間がいただろう。』

『蓮のことか?人間界に捨てた。もうあいつは必要ないからな。』


吐き捨てるように言う
レノンの声には迷いはない

カノンは悲しそうに目を伏せた


『お前は……気付いていたのだろう。あいつが空だと。』

『っ!兄上!『結界はテノンが張っている。リール様に聞かれる事はない。』


二番目の兄、テノンの結界は
闇の神にも劣らない

レノンは唇を噛み締めた


『蓮が空だと知ったら……リール様は蓮を食い、空の力を手に入れようとするだろう。……我は!我は大切な息子を失いたくはなかった……。』

『……しかし。魔王様を倒したのはリール様だ。掟により、我々3人はリール様に従わねばならない。』


カノンの言葉に
レノンは気持ちを落ち着ける為
静かに目を瞑った


『分かっている。』

『では、せめて蓮はお前が殺せ。リール様ではなく、お前の手で。』


しばらくの沈黙の後
レノンはゆっくりと目を開け
消えるような声で呟いた


『分かっている……。』


大好きな
大切な我の息子

だからせめて
せめて最後の時だけは


レノンの頬を
一筋の涙が伝った


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