空の少女と海の少年


──どこまでも続く花畑の中で
花を摘んでいた小さな少女は
フッと落ちた影に気付いて顔を上げると
ぱあっと笑顔になってその人物に抱き付いた


「サラっ!」

『春っ遅れてごめんねっ。寂しかったか?』

「ううんっ!へーきっ!はいっこれっ!」


春は両手いっぱいに抱えた花をサラに渡した

そんな春が可愛くて
サラは思わず春を抱き締めた


『ありがとう春っ!』

「ふふふーっ。きょうのパーティーにかざるんだあっ。」

『パーティー?今日はないはずだぞ?』

「ううんっ!だってかいとがいってたもんっ!みんないっぱいじゅんびしてるって!」


楽しそうに話す春とは違い
サラはとても驚いたようだった

そしてまた、優しく抱き締めた

いつもとはどこか違う雰囲気に
春はきょとんと首を傾げるが
何も言わずにサラの胸に顔をうずめた


しばらくそうしていると
サラが春を抱き締めたまま立ち上がった


『……城に戻ろうか。』

「んっ!」


春を抱いたまま歩くサラの手は
少し、震えていた


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