空の少女と海の少年


胸の奥から押し出したような
掠れたレノンの声に
リールはピタリと動きを止め
蓮はレノンから目を逸らさないでいた


『空の王子は我がやります。リール様は城へ。』

『………。』


何を企んでいる?
裏切る気?

……いや、違う

私に殺されるなら
自分の手で、って事?


心の奥底まで視るように
ジッとレノンの瞳を見つめる


見えたのは、決意

揺らぐことない強い意思

そして、静かな悲しみ


リールは深く溜め息をつくと
鎌を消して空に羽ばたいた


『失敗は許さないよ。』

『御意。』


自分を見つめる視線を感じ
花畑に視線を落とすと蓮と目があった


『じゃあね、王子様。』


リールはクスリと笑い
城に向かって飛んでいく

2人の視線が自分から外れたのを感じると
少し離れた場所に降り立った

ひらりと花畑に落ちた
漆黒の羽根を拾い上げて
深く、溜め息をついた


『……馬鹿みたい。』


大切な人がいたって
幸せな事があったって

いつか必ず失ってしまうのに。

そして悲しくなる

思い出す度に、いつも、いつも。


そんな思いをするなら
最初から感情なんかいらない

何色にも染まらない黒がいい


だから私が染めてあげる

この世界を絶望という黒に

全てがなくなればいい


『私に失うものはないから。』


羽根を持つ指に力を込めると
パリンという音と共に羽根は砕けた


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