空の少女と海の少年


残された蓮とレノンは
無言で見つめ合っていた

しばらくの沈黙の後
気まずそうに蓮は目を逸らし
レノンは小さく笑うと口を開いた


『久しいな、蓮。』

「……ん。」

『元気にしていたようだな。』

「……魔神様もね。」


会話はどこかぎこちなく
また沈黙が流れる

ずっと、聞きたかった事を
今なら聞けるかもしれないと
蓮は顔を上げて、レノンを見る


「どうして僕を捨てたの?」

『……お前が空だと分かったからだ。リール様がいる以上、お前を魔界に置いておくのは危険だった。いつか見つかり、喰われる。……先代の魔王のように、力を奪う為だけに。』

「そっか……。」


操られてるんじゃなかった
魔界様は自分の意思で僕を逃がした

よかった

捨てられた訳じゃなくて

ほんとに、よかった

ほんとに、ほんとに


「よかった……。」


心に重くのし掛かっていた
黒い塊がスッと消えるような安心感

小さく笑った蓮を見て
レノンも優しく微笑んだ

さっきまでの気まずい雰囲気は消え
穏やかで、和やかな時間が流れる


それはとても短い幸せな時間

時間が切れた時

それは望まない戦いの始まり


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