つま先立ちの恋
ベンチから一斉にもれ聞こえてきた安堵のため息。その中で、私と同じようにその場にへたりこんでいる女の子がいた。葵ちゃんだ。

そっか、さっきの声は葵ちゃんの………


私が立ち上がれずにいると審判が、「大丈夫?」とまた聞いた。私は立ち上がり、お尻についた土を払う。すると、


「ごめんなさ~い!」


いかにもワザとらしい声。ピッチャーマウンドに立つ白いハチマキの女の子がペコリ、頭を下げた………その後で。


私はその子が笑ったのを見逃さなかった。



―………… ワザとだ。

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