つま先立ちの恋
ヒカルちゃんはまたすぐに私から目を外すと、長い髪を手ぐしで整えた。

やっぱり美人ってすごい。そんな横顔すらもキレイなんだから。

塗れた髪も艶めいて、伏せる表情は憂いを帯びて、不謹慎にも私は素直に見惚れてしまう。こんなことしてる場合じゃないのに。

ハッとして、ぷるぷる。首を振る。

「…あの、ヒカルちゃん」

話しかけているのにヒカルちゃんの顔は知らない顔をしていた。ううん、聞こえていないと言っている。そして、そこに転がっていたいちごミルクの紙パックを拾う為、私に背を向ける。

「あの、ヒカルちゃん、私、あんなヤツらの言うこと、信じてないから。あと、今日のことも。もしヒカルちゃんが黙っていてほしいなら誰にも言わない」

その背中に私は話しかける。緊張して言葉が定まらない。

「だから、私にだけは本当のこと言ってくれないかな。何がどうしてこんなことになっちゃったのか。ねぇ、ヒカルちゃん、、、いつから?」

窺うように上目遣いになる私。だけど、ヒカルちゃんは動かない。

「私はヒカルちゃんの言うことを信じる。てか、ヒカルちゃんを信じてる。どんなことでも受け止める。だから…!」

「簡単に言わないでっ!」

踏み出した一歩目を、ヒカルちゃんの声に拒まれた。

「私がどんな気持ちになるのかも知らないで!」

ヒカルちゃんの肩が小さく、けれど確かに、…震えだした。
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