つま先立ちの恋
グレーのロングコートと少し崩した髪形が12月の風に揺れていた。車道に停まっているタクシーのドアに手をかけるその姿も絵になる人。そう、岡田明人さん。間違いない。

今日は眼鏡をかけてるみたいだけど、そのせいなのかいつもとちょっと雰囲気が違うみたいだけど、あの顔は間違えようもない。あの顔がこの世に二つあるとも思えないし。

「…なんで、ここに?」

そんな明人さんが優雅に顎を上げて視線を投げた。私もつられて見てみると、そこにあるおしゃれで高そうなお店から一人の女の人が出てきた。

「灯歌ちゃん?!」

思わず街路樹の影に隠れてしまう私。葵ちゃんとパペちゃんも状況がわからないなりにもそこは長年のあうんの呼吸。すぐに私の後ろに並んで隠れて、同じ方向を見た。

「…誰?」

「しっ!」

お店から出てきた人はセミロングのふわふわした髪の女の人だった。冬の太陽に天使の輪を作るその髪色に、亜麻色ってあんな感じなのかなって思う。

裾のふんわりとしたキャメルのコート。腰の上にリボンなんか付いちゃって、いかにもお嬢さんが好きそうなデザインだと思った。私には絶対に似合わない系統だ。


………カノジョ、さんかな?


とか思ったけど、そういう雰囲気でもなさそうだ。

歩いてきたその人がタクシーの前で足を止めて明人さんを見上げる姿は、何故か見てはいけない物をのぞいてしまったような感じで、子どもの私は思わず生唾を飲み込んでしまう。


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