つま先立ちの恋
「あ、そうだ。えっと、先日って言ってもかなり前の9月頃の話になっちゃいますけど、あの時はありがとうございました」

「ああ、お礼を言うのはこっちだよ。冬彦サン、会社行こうとしたデショ?あの人、目を離すとすぐあれだから。お互い大変だね」

………なんか、言葉の端々に私に対する挑戦的な何かを感じるんだけど、これは私の勘違いなんだろうか。それとも私が勝手にそう聞こえるだけなのかな…

きっとそうに違いない。だって、この人はいい人なんだから。と思い込もうとしてみたんだけど、

「明人さんはあんな感じでよくフーのおうちに行くんですか?」

「どうして?」

「あ、いや…なんか、フーの家の中のことよく知ってるみたいだったから」

「でも、君が心配するほどじゃないよ。冬彦サン、嫌がるんだよね、俺が行くと」

…………“でも”?

それはつまり、よく行くってことなんじゃないのか?!

なんて私の乙女心に暗雲が立ち込め今にも冬将軍がやって来ようかという時だった。

「あの、聞いてもいいですか?」

天使の声が聞こえてきたのは。

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