つま先立ちの恋
明人さんは深い紺色のスーツに身を包んでいた。ボタンの場所が少し高めにあるせいなのか、何だかすごく背筋がシュッとして見えて足も長く見える。ネクタイも無地かと思ったけど、よくよく見るとすごく細かい柄になってるんだ。職人技だなぁ。そして、そこに丸くて黒いピンがとまっていた。何だろう、あれ。

それから髪型もいつもと少し違っていた。片方だけ顔がよく見えるように撫でつけられていて、下ろした前髪が揺れる度にその向こう側の明人さんの目が見える。そのチラリズムにドキドキしちゃう。


う~ん、、、この人、やっぱりカッコイイなぁ。


不本意ながらしみじみと実感している私。ぼ~っと明人さんを眺めていると、私の後ろに立っていた金城さんが言った。

「よくお似合いでいらっしゃいます」

「ありがとうございます」

「こちらは明人様のお父様の為にと、生前のおばあさまがお仕立てくださったスーツでございますよ」

「なるほど。どうりであの人がしつこく言うはずだ」

明人さんは片方の眉を少し困ったようにしかめて笑った。

明人さんのおばあさんってことは…フーのおばあさんでもあるのか。

なんて私が考えていると、今度は明人さんが金城さんに言った。

「彼女のブーツは他の物と交換できますか?」

え?まさかのダメ出し?

そう思ったのは金城さんも一緒だったみたい。穏やかながら金城さんの顔つきが変わる。

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