つま先立ちの恋
私がパチクリと目を丸くしていると、今までとはまるで違う声が向けられた。

「さて。灯歌チャン、お腹すいたデショ?」

「へ?」

「あっちにエビがあるよ」

「え、エビ??」

何故に?

展開の速さについていけない私の腰に明人さんの手が滑り込む。この人の手が冷たいのか、それとも私の体が熱っぽいのか。どちらにせよ、その温度差は私に短い悲鳴を上げさせた。

「あ、あの、…」

「というわけなので、失礼しますよ、冬彦サン。」

私の頭の上で三日月のように笑う唇を見た。その唇が挑発するようにフーの名前を音にする。

振り返ったら明人さんの肩越しに、置き去りにされて遠くなるフーの姿が見えた。

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