つま先立ちの恋
レンズの向こう側の小さな目を見つめていると、フーは私が口を開くのを待っているかのようだった。その目を逸らさず、私の目を見つめ返してくれている。まっすぐに。

だから私もその目を逸らさず、じぃ~って。睨めっこ。


そうしたら、


「わかるわけないか」

「え?」

ボソリ。こんなに近かったのに、その呟きをうっかり聞き漏らしてしまったドジな私。だってフーの目を見つめることに夢中で、気付かなかったんだもん。

フーは顔を反らしてため息を吐くと、

「お前は本当に単純だな」

今度は聞こえた。それから、そうつぶやいたフーの顔も。その顔に浮かんだ色も。


なんだか寂しげに見えた。


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