つま先立ちの恋
「フー…」

「戻るか」

フーは立ち上がり、スーツのボタンをとめながら顔を上げた。そんなフーを見上げていたら、いつの間にか私、フーのスーツの端っこを掴んでいたんだ。

「…なんだ。遊びたいなら一人で遊べ。俺はそろそろ、」

「フー、しあわせじゃないの?」

「何だ、それは」

私の下手くそな言葉遣いにフーは鼻で笑う。

「フー、もしかして、だれかにイジメられてるの?」

「どこをどうしたらそうなる」

真剣な顔の私に、呆れ顔のフー。

「やっぱりそうなの? だからいつもここにとじこもってるんだ!」

「お前、人の話聞いてないだろ」

フーが強引にスーツを引っ張ったから、私の手は離れてしまった。

それでもフーを見つめ続ける私を、フーは見下ろしている。

「…ガキと一緒にするな」

この時私は、その言葉の裏側に隠れている本当のフーを見つけたんだ。


そう、それはまさに、


・・・―― 女の直感!


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