東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~

ユーに歩み寄ろうとするあたし。

だけどキクチ・ヨーコに思いっきり“ドンっ!”と両手で突き飛ばされて、危うく個室の床に尻モチをつきそうになってしまう。

「な、何するのっ…!?」

「ダメダメ。トイレのクリスさんが、トイレから出てきたりしちゃダメなんだから♪」

そう言いながら、掃除道具入れのほうに向かった彼女は2本のモップを持ってきて、そのうちの1本をユーに手渡した。


「ねぇ、ユー……コレって……いったい……どういうこと……?」

あたしはひと言ひと言確認するようにして、目を伏せたまま両手でモップの柄を思いつめたようにギュッと握り締めているユーに訊いた。

「分かんないの? あなた、近藤さんに裏切られたのよ」

モップの先で、あたしをトイレの中に押し戻そうとしながら、ユーではなく、またキクチ・ヨーコが答えた。

「あたしはユーに訊いてんのっ」

「…っ!?」

押されながら怒鳴った声にビクッとするユー。


「あたしっ……あたしね……」
< 154 / 301 >

この作品をシェア

pagetop