東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~
走る自転車の上、路肩の街頭に一瞬照らし出された彼の顔がマジだった。

「デカ島……」

その真剣そのものな表情がジョークではないことを物語っていた。


「俺さ、7年ぶりに帰ってきたお前を教室ではじめて見たとき、アメリカで“性転換手術”でもしてきたんじゃねぇか、ってくらいにオンナらしくて驚いたぜ」

「失礼ね! あたしは生まれたときから、ずっとオンナのままデスぅ!」

そう言って思いっきりむくれるあたし。

真顔でそんなこと言うかな、フツー。

「だってさ、ガキのときは一度だってスカートなんか履いたことなかっただろ? 俺の記憶が確かなら、お前がスカート履いてるの、多分あのときはじめて見たと思う」

「そーかな…」

でも、たしかに日本にいた頃、最後にスカートを履いたのはいつだったか、あたし自身にも思い出せない。

「なんか意外ってゆーか、今まで想像したこともなかったけど、実際、おがませてもらうと、けっこーな脚線美じゃねぇか。まさか、あの男勝りのおてんばクリスに、オンナを感じる日が来るとは思わなかったよ」

「やだ。“オンナを感じる”とかヘンな言い方しないでよ」
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