東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~
スカート丈ひざ上25センチで太ももをムキ出しにしていることが、なんだか急に恥ずかしくなってしまい、あたしは内股気味に自転車のペダルをこいだ。
子供の頃はタダの“仲間”ってことで、みんないっしょに遊んでたはずなのに、それから7年経って幼なじみから“異性”として認識されるようになってしまったのかと思うと、なんだかちょっとヤな感じがしたからだ。
「ちがう、ちがう。コイツはお前に対する“褒め言葉”だって」
「ソレって褒めてるのかな? セクハラじゃね?」
「気を悪くしたんなら謝るよ。謝るからバレンタインのチョコだけはくれよな。義理でもなんでもいいからさ。じゃっ」
そう言ってヒョッと片手を挙げると、彼は十字路を右に曲がって、夜のとばりの中に吸い込まれるように消えていった。
“ふぅ…”とため息をつくあたし。
“義理でもいい”って……あたしにマジ惚れしてるのが分かってる相手に、気安くチョコなんてあげらんないよ……。
世の中ってホントうまくいかないよね……想うヒトには想われず、想わぬヒトから想われるなんてさ……。
あ~ァ、子供の頃はもっと世の中が単純だったのになァ……。